市川君、ありがとう……

うん、頑張るよ!


誰にも気付かれないように、笑顔で小さく頷くと、市川君はまた口を動かした。


『セ・ン・セ・イ・ス・キ』


ちょ、ちょっと市川君!

なんてこと言うのよぉ。


顔が赤くなる前に、パッと視線を逸らしたあたし。

心臓が激しく動いてるのは、絶対緊張のせいじゃない。


きっと今頃、あたしの反応を見て市川君は笑ってるんだ。

なんか悔しい……!


でも、こんなやり取りも、想いが通じ合ってるからできるんだよね。

そう思うと、やっぱり嬉しいかも……


あたし、本当に市川君のこと、好きなんだなぁ……


――って、こんなこと考えてる場合じゃない!

今は授業中だ、あたし!


我に返ったあたしは、授業を進めることに専念した。



市川君のおかげかどうかは、わからないけれど。

大きな失敗もなく、その後の授業はなんだかスムーズにいった。


スキ、なんて言われて、緊張がどこかに飛んでいっちゃったせいかもしれない。


そんな感じで、あたしの研究授業は無事に終わった。