次の日のお昼休み。


美術室の戸を開けるあたしの手は、少しだけ緊張していた。

まるで、初恋みたいな気分。


市川君は、もう来てるのかな?


ドキドキしながら室内に入ると、


「あ、やっぱり先生だ」


あたしを見て、先に来ていた市川君がふわっと笑った。


「やっぱり?」

「足音で、先生かなーって思ってたんだ」


胸がキュンとしちゃう。

ねぇ、どうして嬉しいことばっかり言うの?


「市川君、これ……」


差し出したのは、お弁当。

昨日、作ってくるって市川君と約束したんだ。


「ありがと。俺、これが楽しみで、今日学校来たし」

「こんなのでいいなら、いつでも作ってあげるよ?」

「マジで?」


嬉しそうに目を輝かせながら、市川君はお弁当箱のふたを開けた。


「すっげー……なんか食うのもったいねぇや」


感心したように、呟いた声。