でも……今だけはこうしていたいよ。

市川君に、ぎゅってして欲しい。


「センセ、俺汗かいて、」

「平気……あたし、市川君の匂い、好きだし」


甘い香水の匂いに包まれると……

胸が少しだけ苦しくなるけど、ふわふわしたあったかい気持ちも生まれてくるんだ。


「もー限界」


溜息をついた市川君が、あたしを引き寄せた。


「先生、反則だよ」

「反則?」

「匂いが好きとかさぁ、なんかエロイ」

「ちょっ……そういう意味じゃな、」

「俺、先生といると理性って言葉、忘れそう」


……市川君だけじゃないよ。

あたしも市川君といると、ドキドキして何にも考えられなくなっちゃう。


こんな恋初めてで、自分でもどうしていいか分からないの。


ただ、好きって想いだけで、心が満たされていく。

市川君に出会うまでは、自分の中にこんな気持ちがあるんだって、知らなかったよ……



――だけど……

ふいに大也のことを思い出して、あたしの胸はズキンと痛んだ。


大也と、このままでいいはずない。