放課後は、秘密の時間…

市川君が、そっと腕を緩めた。

代わりに伸びてきた大きな手が、あたしの両頬を包む。


「先生、顔上げて?」

「……や……涙、で……ぐちゃぐちゃだもん……」

「大丈夫だよ。俺しか見てない」


でも、こんなの、見られたくないよ……


いつまでも俯いたままのあたしに、市川君が低く囁く。


「先生の顔、ちゃんと見たいんだ。それに……」

「それ、に……?」

「顔上げてくれなきゃ、キスできない」


ずるい、よ……

そんなこと言われたら――……


「先生、かわいい……」


彼の言葉と一緒に、唇におりてきた優しいキス。

それは、軽く触れるだけで、すぐに離れていった。


「風邪。うつしそうだから」


困ったように笑って、市川君は続ける。


「でも、治ったらいっぱいしよ、先生」

「……市川君……」

「そん時は、キスだけで我慢きかないかもしんねぇけど」

「――市川君っ!」