市川君に惹かれてしまった時点で、あたしは大也の傍にいちゃいけなかったんだ。


それにもっと早く気がつけたのなら……

大也に、こんな辛い思いをさせることもなかったの……?



大也のこと、好きだよ。

今でも、すごく大切に想ってるし、傍にいると誰よりも安心できる。


でも、市川君のことも好きなの。

自分じゃ、どうしようもないくらいに……


すれ違うだけで胸がときめくのも、何気ないたった一言に嬉しくなるのも。

大也じゃなくて……市川君なんだ。


市川君の存在は、いつの間にか大也よりも大きくなっていて。


この先、大也のそばにいても……

あたし、市川君以上に大也を想える自信なんかない。


――だから……


「あたし達、別れよう……」

「ダメだ」

「大也っ……」

「ダメだっ!それだけは、絶対に」


声を荒げて、大也はあたしの体をもう一度強く抱きしめた。



あたしが、どんなに言っても……

大也が首を縦に振ることは、ついになかった。