放課後は、秘密の時間…

思わず、こぼれだした彼の名前。

向こう側にいる市川君に、あたしの声なんか届くはずない。


だけど、市川君は何かに引かれたように、顔を上げた。

あたしに気が付いて、驚いた表情を浮かべる。


「――先生っ!!」


たった一言で、あたしの胸が疼き出す。

人ごみを押しのけて歩道を渡ろうとした市川君は、絶え間なく走る車にイライラしたように足を止めた。


「……いつ、この前の……」


呟いた大也が、強引にあたしの体を引き寄せる。


「あかり、二度目はねぇって言ったよな?」


苛立ちが滲んだ声に、あたしは自分のしたことを痛感した。


大也の前で、市川君の名前を呼ぶなんて……

あたしは、何てことをしたの?


強い力が、あたしの顎を固定する。


「他のヤツになんか、絶対渡さねぇ」


あたしと大也の距離が、段々小さくなっていく。


「――あかりは、俺のものだ」


言葉と同時に、大也が強引に唇を重ねた。


市川君の目の前で――……