一日が、こんなに長く感じたことは初めてかもしれない。


放課後なんか来なければいいのに……

何度も思いながら、あたしは時間を過ごしていった。



美術室の引き戸を静かに引く。

軽い木の戸が、こんなにも重く感じられるのは、あたしの心がそうだからなのかもしれない。


市川君は、まだ来ていないみたい。


このまま、来てくれなきゃいい。

そしたら、別れの言葉なんか言わなくてもいいのにな……



室内を見回すと、懐かしさが感じられる。


全部、ここで始まったんだ。


市川君に騙されて、写メでずっと脅されて。

あのときは、彼のことが大嫌いだったのに……


思い出して、急に涙腺が緩んだ。


いけない。

泣いたりしちゃダメだ。


ぐっと唇を噛んで堪えていると、


「――先生っ!ごめん、待った?」


肩で息をしながら、市川君が勢いよく室内に飛び混んできた。