――あのあと。

一睡もできないまま、あたしは朝を迎えた。


赤く腫れていた目も、今はいくらか落ち着いている。


重い足を引きずって学校へと向かうと、いつものように生徒が声を掛けてくれる。


「センセ、おはよ!」

「おはよう……」


生徒の前で、こんな暗い顔してちゃダメだ。

プライベートと仕事はべつなんだから。


無理やりにでも笑顔を作って、いつもと同じように振舞ったつもりだけど……

それが上手くできてるかどうかを気にする余裕は、あたしにはなかった。


「先生、おはよう」


声でわかる。

後ろにいるのが、市川君だって……


「おはよう」


挨拶を返すと、市川君はにっこりと笑った。


「朝から先生に会えるなんて、すげーラッキー」


そう無邪気に言う市川君を、まっすぐに見れない。


『あかり……何でだよ……』


昨日の大也を思い出して……

胸が苦しくなって。


「先生?」


あたしは覚悟を決めて、口を開いた。