放課後は、秘密の時間…

――放課後。


美術室に向かったあたしは、覚悟を決めて戸を引いた。

室内にいる彼の、暗いシルエットが目に映る。


だけどそれは、あたしが見慣れている『彼』のものじゃない。


「二宮先生、市川は?」


問いかけられて、首を横に振った。


市川君は今日、ここには来ない。

来るはずない。


「絶対来ないで」って……

あたしが、そう言ったんだから。


それより、堤君のこと、どうにかしないと。

こんなとこに呼び出して、どういうつもりなの?


「用件は?」

「フッ……急かさなくてもいいじゃん」

「忙しいから、早くして」

「そんな冷たい目で睨まないでよ。市川とは随分態度が違うね」


「市川」という言葉に、あたしの身体がピクリと反応した。

堤君はそれを見逃さなかったのか、更に続ける。


「知られたくないんでしょ?あいつとのこと」

「勘違いしないで。彼とはそういう関係じゃない」


ハッキリ否定すると、堤君は声を上げて笑い出した。


「そこまで庇うほど、市川が好きかよ?」