放課後は、秘密の時間…

たった一言、口にしただけなのに。

どうして、こんなに胸が苦しくなるの……?


市川君は、驚いたようにあたしを見つめてる。


そうだよね……

美術室に来ないで、なんて、初めて言ったんだもん。


こんなこと、言いたくないよ。

でも、市川君を守るためには、こうするしかないんだ。


「先生?」

「今日は、絶対来ないで」

「先生、待っ、」

「じゃあね」


これ以上、市川君と一緒にいたら……

きっと、ごまかせなくなる。


返事を待たずに、あたしはその場を逃げるように立ち去った。

背中に彼の視線を感じるたびに、胸に小さな痛みが走る。



本当は、もっと早く彼に言わなきゃいけない言葉だった。


こんなことになる前に……


ううん。

堤君のことがなくても、あたしは市川君に言わなきゃいけなかったの。


なのに、市川君の顔を見ると、「来ないで」ってどうしても言えなくて……


だから、いい機会だったのかもしれない。

市川君と距離をおくためにも、これでよかったんだ……