放課後は、秘密の時間…

声に顔を上げると、市川君が心配そうな視線を向けてる。


「会議で疲れたのかな。でも、大丈夫だから」

「本当に?」


疑わしそうな目をした市川君に、笑顔を作って頷いてみせた。


堤君とのこと、市川君には絶対知られちゃいけない。


もしも、あたしが市川君に相談でもして、それを堤君が知ったら……

彼はこの“秘密”を、学校中に公言するんだろう。


そしたら、あたし達二人とも、きっと学校にいられなくなる。


あたしはただの実習生だけど、市川君はまだ高校2年生。

成績も抜群によくて、優等生だって先生方にも期待されてる。


こんなことで、市川君の学校生活を――、

将来を壊せない。


堤君が何を望んでるのかわからないけど……

あたしさえ、彼の言う通りにしたら――


「市川君」

「ん?」

「今日の放課後……」

「美術室の掃除するとか言ってなかった?俺手伝うよ」

「それなんだけど……今日は、谷村先生に授業のことで相談することになってて。だから……」


市川君、ごめんね。

あたし、嘘つきだね……


「だから、美術室には来ないでね」