「…………っ」
掴まれた顎が微かに痛い―…
だけど――……
扇李がいなくなって、部屋に一人になった瞬間
「…うっ」
涙腺が弱まったように、目の前がぼやけてくる
涙だ、なんてすぐにわかったけど―…
「ダメ…わたしっ」
それを零れる前に、必死に押さえる
泣くな、泣くな、泣くな
まだ、泣いたらダメなんだ
自己暗示のように"泣くな"を繰り返す自分が馬鹿馬鹿しい
わたし、本当にこんな所で何をしてるんだろう
もう、わからないよ
自分がどうしたらいいのか、どうしたいのか、分からない
ただ、乱暴されてこんな惨めわたしは、馬鹿だ
「……苦しいよっ」
院長様…っ
色々な感情や思い、切なさ、苦しさ、痛さ、憎さ
されぞれが、混ざって、分裂して、そしてまた混ざって…ごちゃごちゃだ…
この感情をわたしはどうしたらいいか、わからない
自分がもう、何を思ってるのかも、私には分からなくなってきた―――……
私はその夜、たった一睡も出来なかった―…
.


