それに拾ってくれたのは、この人だ。お礼も込めてあげるのも悪くない


「いいのか?」

「はい」


頷いてりんごを差し出すと彼は口元を緩めてそれを受けとり、再び手の上でもてあそぶ


「…」

なんか、凄く不思議な人だな。雰囲気とか見た目もそうなんだけど…この人の周りだけ、なにか空気がちがう…


よく分からないけど、そんな感じがする


そんな事を考えていると、彼は私の視線に気付き無表情のまま私にそっと腕を伸ばしてくる


「?」

白くて綺麗な手が私の首筋に触れてから近くの髪の毛をそっとすく


「ゴミがついてる」

「…あ」

手にある枯れた葉っぱが風になびきながら消えると不意に彼と目線があってしまう


彼が誰なのか、気になって仕方がない

初めて会った人なのに、なんでこんなに気になるの?


「あの」

「?」


「名前…なんて言うんですか?」


聞けば何かわかるかも、そんな淡い期待を持ちながら、聞いた問は…


「いつか分かるから」


また意味が分からない答えになる


「分かるって、わたし「やーゆーねぇーちゃんー!!」」


気になるから、そう言おうとした時


私の背後から、子供たちの叫び声が聞こえる


あっ、そうだ!子供に待ってと、言ったのを忘れてた


「ご、ごめん!今いくから!」


後ろを振り向いて叫んで再び彼をみると


「あれ?」


そこには、誰の姿もない

うそ!今の短い間に帰っちゃったの?



.