だから、扇李も絶対に知らない
知らないものなんて用意出来ないだろう
ましてや、もし分かってもわざわざ人間界に行くなんて事は絶対にしないはず
小さな反抗に過ぎないけど、身勝手すぎる扇李には調度いい
「そうか、葡萄と言うもの…それなら食べるのだな」
「………たぶん」
「たぶんなど言わせるか。約束だぞ、忘れるなよ」
私から離れて、扇李は一人で納得しながら部屋をあっという間に出て行ってしまう
馬鹿な扇李…葡萄なんて絶対に用意出来ないよ…
もし人間界に行っても、たぶん人間界は葡萄の季節じゃない
それに、私の町は田舎だから絶対に季節はずれの葡萄なんて手にいれられないよ
「………」
扇李が出ていった部屋は雨の音だけで、それが妙に不自然で
私はため息をはいて、ベッドに再びはいった
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