もう、私の心に緊張なんて言葉はない


ただあるのは、扇李に抱かれてベッドにいるのが暖かいってこと


人間の心って、こんなにもすぐに変化するんだなって思うと凄い


つい数分前は緊張してドキドキして、怖かったのにな…












こーやって、一つのベッドで眠るなんて予想外だ


扇李との夜は冷たくて嫌な思い出しかないのに、今は甘くて暖かい


きっと、私も扇李もこんな夜を迎えるなんて考えもしなかっただろう




「……扇李」

「ん?」

「…わたしね」


だから、私は少しだけ…


「ちょっとだけ…扇李が好き…だよ」


「…………」


まだハッキリ好きとは分からないけど


嫌いじゃない、普通とも言えない、だからって大好きじゃない


だから、少しだけ好き…


「そうか」

「………ぅ……ん」


そう話したら、暖かい温もりに一気に眠気が襲って来て…


「沙優…」


扇李が私を呼ぶ声もだんだんと聞こえなくなってきて…












「寝たか…」


私はすっかり、扇李に抱かれながら眠ってしまった―…