「もう、よい…沙優の気持ちはわかった」
頭を数回優しく触って、すぐに視線を本に戻してしまう
「沙優に感謝されるのは馴れないな」
「…へ?な、なんで」
「嫌われてると思ってた女に感謝されて変な気分じゃない奴なんていない」
あ、あぁ…そーゆうことか…
「でも、私、扇李の事今は嫌いじゃないよ?てか、嫌いにはなるなって言ったじゃん」
あの宴の席で彼はそう言った。なんて都合のいい台詞なんだって思ったし、そんなこと…優しくしてくれなくちゃ、無理だって
そう、思っていたけど…扇李はあの時から優しくなった
こうやって近くで話しても、苦痛じゃなし
寧ろ、雰囲気とか…楽しいって感じてる。名前だって呼んでくれるし
「扇李、あれからなんか優しいから…嫌いじゃないの」
「………」
「そうだな、だけど。敢えて言うなら…"普通"」
私が呟くと、扇李はフッと鼻で笑う
・


