どうして、こんな所にトラがいるの?
あり得ない現実に私の身体が震えると、咲ちゃんが私の姿を見つける
「お、ねっ…ちゃっ」
「咲、…ちゃっ…ん」
助けて…涙を流しながら必死に言う咲ちゃん
ダメだよ、わたし…咲ちゃん達を助けてなくちゃ…!
トラがなんでここにいるとか、そんなことより今は咲ちゃん達を助けなくちゃいけない
ゴクリと息を飲んで、たまたま近くにあったホウキを手にもつと、ヴッーとトラが私を見て、威嚇するかのような声だ
ひるんじゃ、だめ…
皆は私が守らなくちゃいけないんだ!
ギュと握りしめ、ホウキをトラにむかって大きく振りかぶった瞬間
ヴガォォー!!
大きな鳴き声と共に、跳び羽ねたトラが私の身体を床に押し倒して…
「っ」
た、食べられる!!
そう思い、ギュと目を閉じると―…
「だから言ったんだ…早く消えろと」
「っ」
聞き覚えのあるこの声に、私はそっと目をあけると目の前にいたはずのトラが横に一連に並び座りながら頭を低い位置に下げていた
な、なんで?
威嚇していたトラがやけに大人しい。さっきまでとは大違いだ
だけど、何が原因なんてすぐに分かった
トラ達の視線の先には私でも気絶をしている咲ちゃん達でもない
そこには……
窓の淵に座りながら、満月の月明かりに照らされながら私を見下ろす…
扇李がいた―……
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