『仰せのままに、お嬢様』《完》

「この先はもう住宅街だ。

リリカちゃんちに負けず
劣らずのお屋敷街だからな」


「ここより先で誰かが楓を
見てるとは、考えにくい……?」


沈痛な面持ちで幹生君と
顔を見合わせた時だった。


視界の端で、スッと
黒いものが動く。


「――――っ!?」


背の高い、黒のシルエット。
思わず敏感に体が反応した。


「――幹生君っ!」


最初は、楓を連想させたから
気づいた。

でも視線をやって、ある
意味それ以上に驚く。


狭い路地から一度姿を現し――
でもあたしに気づくと慌てて
引っ込んだのは、あの人だ。
いつか、大学の校門で声を
かけてきた不審者。

顔はわからないけど、
背格好でほぼ間違いない。


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