『仰せのままに、お嬢様』《完》

しかし、その拳が振り
下ろされることはない。


楓は素早い身のこなしで
首をスライドさせて拳を
避け、右手一本でパシリと
遼人の手首を掴んだ。


「…………っ!?」


まさか自分より細身の男に
攻撃をかわされるとは
思っていなかったのだろう。

遼人の顔が、動揺に歪む。


だが楓は、涼しい顔で遼人の
手を掴んだまま言った。


「久賀家の本意が旦那様に
知れれば、友好的な関係を
続けることすら危うくなる
でしょう。

これ以上のトラブルを招く
ことをいとうのであれば、
すみやかに身を引いて
頂きたく存じます」


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