『仰せのままに、お嬢様』《完》

「あ………」


たしかにそうだ。

香奈枝が電話した方がいいん
じゃないって言ったけど、
あたしは躊躇った。

あの時すぐに電話してれば、
伝える時間はたしかに
あったと思う。


「ゴ、ゴメン。単なる勘違い
かもしれないと思って……」


そう言うと、楓さんの声は
さらに厳しさを増す。


「勘違いでもけっこうなのです。
万一のことがあってからでは
遅いのですよ?

私はあなた様の執事なのです。

どのようなささいなことでも、
不審と思えば直ちにご連絡
下さるよう、重ねて申して
おりましたのに――」


「か、楓………」


こんな楓さんの声を
聞くのは初めてだ。

丁寧だけど怖くて、どこか
辛そうで。


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