『仰せのままに、お嬢様』《完》

最も懸念してたのは誘拐の
はずだったのに、とっさに
頭に浮かぶのは、いきなり
ナイフで刺されるんじゃ
というドラマのワンシーン
みたいなことだった。


もうすっかり怖じけづいて、
あたしは身を縮めてギュッと
目を閉じる。


足音が迫り――そしてそれは
あたしの正面で、ピタリと
止まった。


(え――止ま、った……?)


恐る恐る目を開けるのと
同時に、頭上から
降ってきた声――…。


「失礼。

寿リリカ嬢ですね?」


「は―――…」


あれ? 悪漢って普通、
こんなふうに呼びかけるん
だっけ?


パチクリと瞬きした視界に、
サングラスの男の人が映ってる。


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