『仰せのままに、お嬢様』《完》

そんな怪しい雰囲気をかもし
出す人が、一人で立ってる。


そしてその人は――見間違い
じゃなければ、こっちを
見ているように見えた。


(え…………?)


サングラスのレンズがこっちを
向いてて、奥の瞳と目が
合ったような気がした。


その途端、その人はパッと
背中を起こし、コートの裾を
ひるがえして足早に展示室を
出ていってしまう。


(何なの………?)


かすかな不審を抱いた時に、
楓がやって来る。


あたしは無意識のうちに
楓の袖を掴んで聞いた。


「楓……今出ていった人を、
見てた――?」


「はい。先程から幾度と
なくあの人物の視線を
感じておりましたので、
様子を窺っておりました」


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