『仰せのままに、お嬢様』《完》

楓がそばにいないことに
気づいて、あたしは立ち
止まって周囲を見渡した。


すると、楓はまだあたし
達がさっきいた辺りに
突っ立ったままでいる。


「楓、どうし―――」


少しだけ声を大きくして
呼ぼうとする途中で、あたしは
楓がジッと何かを見てる
ことに気づいた。


「……………?」


楓の視線を追うと――
見てるのは、この広い
展示室の出入口付近。


そこに、太い柱にもたれて
立っている人影があった。


(なぁにあの人。真っ黒……)


と言っても黒人ってわけ
じゃない。全身黒づくめなんだ。

黒いパンツに黒いコート。
つばの広い黒い帽子を深く
かぶり、サングラスまでして。

あれじゃ顔どころか年代も
全然わかんない。


_