月下の踊り子




「――三十五かぁ……」

「何だよ。三十五だったら都合が悪いのか?」

「いや、悪いと言う訳ではないんですが――。いえ、やっぱり悪いです」

「ああ、そんな落ち込まないで舞歌ちゃん。こいつロリコンのケもあるから大丈夫だよ」



山口が後ろから私の口を塞いで話に突っ込んできた。


舞歌は山口の言葉にキョトンとする。



「ロリコンって何ですか?」



舞歌が訊ねる。



「ロリコンって何だ?」



塞いでいた手を退けて私も訊ねた。



「…………いや、悪い。俺のアイデンティティの為にこれ以上の質問はしないでくれ」



揃って首を傾げる私と舞歌。どうせ下らぬ事だろう予測は付くのだが。



「そろそろ時間、だな」



腕時計の針を眺めて呟く。


既に日付は変更してから三十分が過ぎていた。