月下の踊り子






偽善――。


そんな言葉が頭を過ぎる。


そんな事、ここにいる限り出来るわけがない。


それを分かっていて舞歌の夢を何一つ否定せず聞いているのだ。


それを偽善以外の何と言えよう。



だがしかしその踊り子の夢を応援してあげたい。


変えようのない本心でそう思っていた。



「そうだ。羽鳥さんって踊りには興味ないんですか?」

「社交程度だ。本格的な事は正直、全く分からない」

「なーんだ。お仕事用か」

「すまないな」

「いえいえ謝る事はないですよ。そうだ!私が教えてあげましょうか?」

「はぁ?」

「ほらほら立って立って」



牢屋越しに舞歌は胡坐をかいていた手を引き、無理やり起立させようとする。


踊りなんて未知の世界だ。到底理解出来るとは思えないのだが。



「仕方ないな」



舞歌の手を握り返し、素直に彼女の指示に従う事にした。