月下の踊り子




「ええっ!?そんなの私には無理ですよ。でも武道館でやりたい――くらいは思わなくも無きにしも非ず」

「どっちなんだよ」

「やりたいですよっ!良いじゃないですかそれくらいの夢、持ってたって!」

「いや、別に責てる訳ではないんだが」

「うー……」

「そんなに唸るなって」

「羽鳥さんって優しいんだか意地悪なんだか良く分かりませんね」



ぷいっとそっぽを向く。どうやら拗ねてしまったみたいだ。



「別にどちらでもないとは思うが。なぁ舞歌。踊り子としての具体的な夢なんてないのか」

「踊り子としての夢ですか。う~ん……そうですねぇ」



下唇にちょこんと人差し指をあてながらしばらく考え込む。


先ずは場所なんかどこでも良いので大勢の人に見てもらいたい。


そして後々、大きな舞台でやってみたい。


そんなささやかな舞歌の夢を聞いた。


そう、舞歌は決して叶う事のない夢を熱く語る。