月下の踊り子







「容赦ないな」

「何だよ。もう少しソフトな表現をご希望でしたか」

「いや」



そのままで良い。


下手に取り繕われるよりよっぽどそっちの方が自分という人間が他人からどう見られているのか分かり易いから。


そろそろ昼の休憩が終わる。夕方の分の仕事を片付けたらそれで本日は終わり。夜勤はない。つまり舞歌と逢う事もない。


飲んでいたコーヒーカップの中身を空にすると、「そろそろ行くか」と山口に呼びかける。



「あっ悪い。俺、ちょっとやらなきゃいけないことがあるんだ。先に行っててくれ」



そう言うと山口は椅子から立ち上がり、ポケットに手を突っ込んだまま一人の看守の元まで歩みを進めて行った。


どうやら山口は山口なりに昨夜の事は相当、頭にきているらしい。