☆間奏☆
雲が月を覆い隠し、周りには闇が広がっている。
そこに光はなく、ただ寒さだけが無情にも周囲を覆う。
牢の中で膝を抱え、昼の出来事を思い返しては溜息を吐き、今夜、逢いに来るであろう人へ向ける笑顔の練習をしていた。
名前は知らないけど機嫌の悪かった看守さんに近付いて、いきなり殴られて切った唇。
既にその傷の後には口内炎が出来ており、触れると痛みが口内に広がった。
突然、鳴り響くブーツの音。それは見回りが近付いてきている合図。
私は慌てふためき、取り敢えずちょこんと正座をしてその人を待った。
看守さんが牢の前で立ち止まると、意を決して言葉を投げかける。
「あの、羽鳥さ――」
違った。

