月下の踊り子








舞歌の様子が気になって仕事に身が入らない。


舞歌が誰に傷つけられたかなんて最初から予測は容易かった。


囚人は仲間意識が強い。群れる事で自己を保つ。


そうなると看守達の誰かがやったとしか考えられない。


先ほど宮沢が注意された腹いせに偶然出会った舞歌を殴りつけた。


そう考えもしたが、どんなに考えたって無駄に終わる。


犯人探しなんて舞歌だけ特別扱いする事も出来る訳がない。


看守の腹いせで囚人が被害にあうのは今に始まった事ではない。


ヤキモキしたまま夜勤の時間が迫る。


舞歌が話したくなければそれで良い。


しかしその反面、舞歌を殴った人間がどうしても許せなかった。


夜勤の時間。宮沢は話し掛けようとはしない。


私も別に自分から話し掛ける事もしないし、そうしようとも思わない。


今の時間は二十二時少し前。


そろそろ前半の見回りが始まるなと思った瞬間、宮沢は電灯を持って椅子から立ち上がった。


挨拶もせずに宮沢は囚人達のいる牢へと姿を消していった。