「舞歌は昼はいつも此処に来ているのか」
「いえ、たま~に来ますけど、いつもじゃないです。羽鳥さんは?」
「私も稀に来るくらいだな」
「一緒ですね」
舞歌はにっこりと笑う。
それにつられて笑おうとするが舞歌のちょっとした変化に気付いた瞬間、顔をしかめた。
無言で曲げた人差し指の側面で舞歌の顎を持ち上げる。
「えっ、ちょっと、羽鳥さん」
狼狽する舞歌。
しかし私はそんな事はお構いなく舞歌を真剣な目で見詰めている。
なぜか舞歌はゆっくりと目を閉じる。そして数秒――。
「あの、羽鳥さん、何してるんですか?」
「唇が切れてる」
「あっ、これは……」
顎を解放されると、とたんに目を背ける舞歌。
「誰にやられたんだ」
「えっと、これは、唇が乾燥しちゃって切れちゃったみたいですね」
「嘘つけよ」

