舞歌は食べ物を溜め込んでいる栗鼠の様に頬を膨らませた仏頂面で座っているベンチまで歩いて行くる。
大人気ない行動に腹が立ったがそれ以上に子供も騙せるかどうかも分からないような詐欺に見事に騙された自分に腹が立ったようだ。
「よう」
「よう、じゃないですよ。競争って言ったじゃないですか。フライングも良い所ですよ。もうっ!」
「まぁそう怒るな。今は昼の休憩時か」
「はい。そうですよ」
「昼飯は?」
「もう済ませました。残りの三十分、のんびりしたかったんで外の空気を吸いに来たんです」
「そうか」
そのまま無言で二人はベンチに背中を任せ、空を見上げる。
真っ白な入道雲。少し寒いのは季節柄、仕方がない。
ふと思う。
こうして二人でお互いの身分なんて関係なしに暇を持て余すのも良い物だ、と。

