月下の踊り子






「何するんだ?」

「座ってお話しましょう」

「こんな所に座らずともあそこに休憩用のベンチがあるじゃないか」



言葉通りベンチを指差す。


少し時代掛かって薄汚れてはいるが問題はないだろう。


舞歌は何か考え込んでいる。


嫌な予感がした。


嫌な予感は迷惑な事に大抵、当たる。


身に降り掛かる前に逃げ出そうとするが。



「そうですねぇ。じゃあ、あのベンチまで競争しましょ」



舞歌はにっこりと微笑みを浮かべてそんな事を言い出した。


嫌な予感的中。嘆息した。



「何でそんな事を私が」



あからさまにウンザリした顔をすると、舞歌は一瞥して、拒否を却下した。