ゴツゴツした手を引いてやると山口は身を起こすと埃を払うようにパンッパンッと腕と胴回りを叩いていった。


服装を整えると山口は少々恨めしげに私を睨む。



「もう少し優しく起こせよ」

「勤務中に寝てた奴が悪いだろう」

「だからと言ってデコピンはないだろ。あまりの痛さに椅子から転げ落ちたぞ」

「いや、デコピンじゃない。これだ」



ボールペンを取り出して軽く指ではじく。



「余計、痛いわっ!」



山口の反論を物ともせず萎れた煙草を胸ポケットから取り出すと、口に銜えてジッポライターで火をつけた。


一服すると張り詰めていたものも自然に開放され、肩の力が抜ける。


ガタッと椅子に腰掛け、フィルター近くまで灰になった煙草を灰皿の上に押し潰した。