「少し冷えちゃいましたね」
「なら身体を使って温めたらどうだ」
「か、身体を使って温めるって?」
狼狽する舞歌。何故、狼狽しているのかは不明だが。
「…………いや、だから踊りで。それとも一日の練習量は決まってるのか」
「あ、ああ、そういう事ですか」
「どういう事だと思ってたんだ」
「いえ。気にしないで下さい」
舞歌は真っ赤にした顔を私から背ける。
複雑な表情のまま胸に手を当て、呼吸を落ち着かせた。
そして自然に訪れる静寂。
その彼方から開かれる夢の扉。
舞歌は時に薔薇の様に激しく、時にくちづけの様に甘く舞った。
その踊りはまるで子守唄を聴いているかの様に心地良くしてくれる。
観客は私一人。

