全ての牢屋を見回り、看守室に戻ると山口が頭を揺らしながらウトウトとしていた。


全く、ここの職場には真面目な人間はいないのか、と嘆息する。


山口の肩を揺すると間抜けな声色で「はい、寝てません」と呟いた。


こういうのは酔っ払いの「酔ってません」くらい信用がない。


仕方なく胸ポケットに挿してあったボールペンを取り出すとゆっくりとしなりを効かせ、山口の額に近づけてゆく。



バチンッ!
「痛ぁぁぁぁ!」



真っ赤になった額を押さえながら椅子から転げ落ちる。


手を差し伸べる事もせず、倒れた山口に向かって皮肉気に「おはよう山口君」と囁いた。



「これはこれは上官殿、よい朝で」

「夜だよ」

「取り敢えず起こしてくれないか」



そこで漸く手を差し伸べる。