多分、舞歌は自分が死んで悲しんでくれる人間がいてくれる事を祈っていたのだろう。
だが、私の返答は「分からない」それは舞歌にとってどれほど希望の持てる返答だったか判らない。
「あっ見て下さい雪ですよ。羽鳥さん」
少し高い場所にある外へと繋がる鉄格子からちらつく雪。
何処までも白く、そして綺麗で、まるで舞歌の写し身の様だった。
「寒くないか。その鉄格子の奥にある窓、ちゃんと閉まるんだろう。閉めたらどうだ?」
「はい。でも、もう少しだけこの雪を感じていたいです」
「私も寒いんだよ」
「もう、羽鳥さんってば情緒ないですね」
怒られた。
「すまないな」
「いえいえ」
たどたどしく窓を閉めると(格子の奥に窓があるのだから閉めにくいのは当たり前だが)舞歌は一息ついた。
窓越しから見る雪もこれはこれで良いと思う。

