「そんな事は考えた事もなかったな」
「じゃあ、私が死んじゃったら羽鳥さんは悲しいですか」
「…………」
声を失う。
自分が死んだら悲しいか。
舞歌は確かにそう言った。
そんなの、答えは決まっている。
囚人を殺す事は仕事の内の一つだ。
例え相手が珍しく無駄話をする程の相手だとしてもいちいち私情を挟んではやっていけない。
「……分からない」
だけど、口からは答えるつもりの物と違った回答が出て来た。
暫しの沈黙。その静寂を破ったのは舞歌の明るい声だった。
「分からない、ですか。ありがとうございます。今はそれだけで十分です」

