「今夜は踊りの練習はしないのか」
「さっきまでしてましたよ」
「毎日、やっているのか」
「はい。勿論。私の唯一の楽しみですし。でも、どうしてですか?」
「いや、毎日やっていたのなら何故今まで気付かなかったのかって思ってな。舞歌はもう二年ほどここにいるだろ」
「それは周りの寝ている人の迷惑にならないように極力、音を立てないように努力していますし。それに――」
「それに?」
「いえ、何でもないです」
「…………」
「…………」
「……はぁ、分かりました。言いますよ。怒らないで下さいね。羽鳥さんって何だか全てに対して無関心そうじゃないですか。だから数多くいる囚人の一人が何をしていたって気にも留めなかったからじゃないですか」
「それは――」
言葉に詰まる。
確かに囚人が何をしようと興味がない。
いや、囚人に限らず他人に興味がないのだ。
そんな人間だって言う事は私自身、自覚している。だから、
「そうだな」
肯くしかなかった。

