頭を抱えている私を見つめながら舞歌は怪訝な表情をしている。
どうやら細部までは知らないようだ。
「それで、舞歌は私に逢う為に就寝時間までずっと待っていた、と」
「――はい。あの、羽鳥さん、言ってて恥ずかしくないですか?」
「少しだけ、な」
二人同時に吹き出す。
歯が浮くようなキザなセリフ。
正直、自分には似合わない。
だけどそんな事はどうでも良かった。
舞歌の笑顔を見た途端、巻き起こった胸の高鳴るこの不思議な心地良い感情をただ抱き続けていたかった。
「お仕事の時間は大丈夫なんですか」
「ああ」
地面に腰を落ち着かせる。
山口が差し向けた事だ。
戻るのが多少遅くなっても文句は言うまい。

