月下の踊り子



「…………」

「…………」

「あ」

「やっと気付いたか。昨日、勤務中に寝るなって言ったのは何処のどいつだよ。ほらっあと二分もしたら一回目の就寝の見回りだ。さっさと行って来い」



呆れながら懐中電灯を投げて寄こす。


それをキャッチすると目を擦りながら欠伸をかみ殺して立ち上がった。


夜勤の見回りは通常二回。


二十二時と二十四時に別れる。


正直言って、一回目の見回りはだるい。


二回目の見回りと違って大抵の囚人が起きているのだ。


一人一人、注意するなんてとてもじゃないが出来ない。


だから就寝の見回りと言うのは名だけ。


囚人がちゃんと牢の中にいるかの確認と言った方が正しい。



「悪いな」

「良いよ。仕事が重なって疲れてんだろ。まぁ今日の夜勤は俺の責任なんだし」



それもそうだな、と思う。


本来なら今の時間は寝てても誰からも文句を言われないはずだ。


そう考えると今更ながら段々とむかっ腹が立ってきた。