「あれは宮沢、か……」
「おー、嫌だねぇ。あいつ少しでも気に食わないことがあるとすぐ囚人を殴りつける。何が楽しいんだろうな。うわっあれ、痛そう」
「そう思うんなら止めてくれば良いじゃないか」
「何で?別に俺は囚人を殴るような真似はしないだけで、わざわざ助けて正義の味方気取るつもりはないよ。要らぬ火の粉を浴びるなんて真っ平ごめんだね。さわらぬ神に何とやらってやつさ」
「以外に淡白なんだな」
「羽鳥には敵わないよ。そう言う羽鳥は宮沢を止めないのか?――って訊いても無駄か」
「ああ、無駄だな。別にあいつも死ぬまでやらないだろ。良いからさっさと購買に行くぞ」
「へー、へー」
興味なさ気に宮沢から顔を背けた私の後を山口が続く。
宮沢の悪い癖は今に始まった事ではない。
私も山口同様、渦中に飛び込んでまで注意するつもりは更々なかった。
今までだって気絶したらすぐに止めていたし問題はないだろう。
そう思案したが今まで大丈夫だからといってこれからも大丈夫なんて保証は何処にもない。
そんな事は百も承知。だが、止める理由はない。
仮に殺してしまっても、上の方から監督不行き届きなんて言われなければ自分には何ら関係のない事だ。
暴力?結構じゃないか。
自分は使わないだけでそれを他人に押し付けたりはしない。
どうせ、相手はいずれ死ぬ身なのだから。

