「……ったく、今日の昼飯はお前の奢りだからな」
「ああ、任せとけ。最初からそのつもりで誘いに来たんだ」
夜勤の代償が昼飯一食とは些か割に合わないが無用な物言いはせず山口の後を付いて行く。
この監獄から看守達に支給される昼飯ははっきり言って不味い。
なのでいつも購買で看守達は昼を済ませている。
購買は金さえ払えば囚人も利用可。
しかしその場合、元値の何倍もする価格を叩きつけられる訳だが。
そんな高値を前にしても囚人の何人かは身内からの仕送りや囚人同士の賭け事なので得た金で時々この購買を利用していた。
勿論、仕送りがない者や賭け事をしない者は金がないので利用したくても出来ない、故に全ての飯は残飯とも思える最低限の食事しかとっていない。
階段を下りると、何人かの囚人が昼の自由時間を利用してたむろっていた。
私達の姿に気付くと囚人達は無言で脇へ場所を移し、私達の行く道を空ける。
気にもせず、歩いていると少し遠くで囚人を殴りつけている看守の姿が目に映った。

