月下の踊り子





「よいしょっと」



数時間座っていた椅子から立ち上がる。



「ジジくせぇな」

「悪かったな。実際もうそんなに若くないんだよ。数時間、椅子に座っているだけで腰が痛くなる。一日座ってりゃヘルニアになってもおかしくない」

「んな、大袈裟な。あっそうそう、羽鳥。お前、今日も夜勤あるから」

「は?何の冗談だ。今夜は宮沢と境の番だろう。どうして私が?」

「仕方ないだろう。さっき昼飯三日分と夜勤を賭けて負けちまったんだから」

「何で山口が賭けに負けたのに私に夜勤が回ってくるんだ」

「いや、ほらっ夜勤って原則的に二人以上だし」

「全然、理由になってない」

「…………」

「…………」

「それじゃ、そろそろ昼飯にしようか」

「いや、答えろって」

「上官殿の夜勤も賭けて勝負してしまいました。ゴメンなさい。反省してます。もう二度と致しません」



態度が全然反省しちゃいない。