月下の踊り子





選択肢は三つ。


目の前の書類を早急に片付けて、手早く仕事を終えるか。


無理をせず、惰性的にのんびりと片付けるか。


やってられるかこんな物!と書類をぶちまけてしまうか。


取り敢えず最後のは論外。


職務放棄は素で笑えない。


何本目かの煙草を灰皿に押し潰した後、一枚目の書類にゆっくりとペンでチェックを入れていく。


しかしまぁ何時もの事だが軽く眩暈を起こしそうなほど多い。


体積にして電話帳一冊の半分くらい。


この多さを一人でやれと言うのだから投げ出したくもなる。


下っ端の時にやらされていた囚人の監視の方が数倍、楽だ。


三百枚ほど終わらせた後だろうか、傾けていた首の骨を鳴らして、背もたれに寄り掛かった。


アナログ式の腕時計に目を移す。


短針と長針がちょうど十二の数字で重なっていた。



「そろそろ昼時か」



再び煙草に火をつける。


丁度これが最後の一本だ。


吸い終わったら昼食にしよう。


そんな事を考えながら煙草を咥えたまま目を軽くマッサージする。