この少女に憎みや恨みなどの負の感情はない。
死の直前にも全ての人間に感謝の意を表していた。
それは、どれだけ心が清らかでないと出来ない事か。
スポンジに大量の水を浸し、それを手にしたまま私はゆっくりと舞歌に近付く。
このスポンジの濡れが十分でないと1890年にニューヨーク洲のオバーンで初めて電気椅子に掛けられたウィリアム・ケムラーの様に数回の電撃を与えなければならない事になる。
元々、電気椅子は公開処刑の為の代物だ。
死刑囚が意識不明になり、泡を吹こうとも死亡するまで数回の電撃を流し、その凄惨さを見せる為の物。
しかし今は不十分な電撃ではなく、一回の電撃で確実に死刑囚は死に至る。
革帯で縛られた舞歌の手の上に自分の手を重ねた。
舞歌の微かな震えが伝わってくる。
「大丈夫だ」
舞歌だけに聞き取れる様に私はそう言った。

