「……ねぇ羽鳥さん」
「何だ」
「私の最後のお願いを訊いて下さい」
「ああ、何でも言ってくれ。私に出来る事ならどんな事でもしよう」
「とても簡単な事ですよ。明日――羽鳥さんが私を殺して下さい」
「なっ」
その言葉はハンマーで頭を殴られた衝撃と擬似していた。
驚きのあまり目を見開く。今ほど舞歌を残酷だと思った事はない。
何が簡単な事だ。そんな残酷な願いを私に叶えろと言うのか。
確かに死刑執行人は重要視されないので予定の者に頼めばそれだけで済む事だ。
だけど押すだけで世界が終わるボタンを定めと割り切って押す事の出来る人間がいるだろうか。
舞歌が座る電気椅子のスイッチを入れるという事は私にとってそれと同意義だ。
闇に還す悪魔のボタンを押せば、忽ちに舞歌の命の灯火は消える。
その役目を私にやれと?

