「もう良い」
「…………うっ」
「もう笑わなくったって良い。悲しい時は泣いて良いんだ」
舞歌は静かに瞳を閉じる。そして微かに肩を震わせ、嗚咽をかみ殺しながら……。
泣いた―――。
「羽鳥、さん……私、死ぬの怖いです……」
溢れる涙を堪える事もせず、泣き言を漏らす舞歌。
その時、初めて本当の舞歌を見る事が出来たような気がした。
自然と自分の頬にも涙が伝っているのを感じた。
凍てつく雪が春の息吹で溶けて行くように涙が溢れ出した。
別に良い。二人だけで構成された世界でその涙を誰が責める事などしよう。
涙を流した数だけ人は強くなれる。
だからこの涙はきっと無駄になりはしない。

