夢は叶わなかったんじゃない。
舞歌は夢を叶えるスタート台にさえ立たせてもらえなかったのだ。
憧れの舞台を夢想して、でも決して叶う事はなく舞歌はそれを受け入れて生きてきた。
そんなのはあまりにも悲し過ぎる。
舞歌は少し強く頭を私の胸に押し付けてきた。
微かにその身体は震えている。
あぁ……本当に馬鹿だ私は。
何故、今まで気付いてやれなかったのだろうと自責の念に駆られる。
僅か十六歳の年端もいかぬ少女が全てを受け入れて尚も本当に笑っていられる訳がない。
それでも舞歌は必死に耐えて、私の前では笑い続けてくれたんだ。
「本当に、笑ってる訳、ないじゃないですか……」
その言葉を待っていた。

