「何だか、最後って思っちゃうと話したい事もうまく出て来ないものですね」
「そうだな。あのさ、舞歌」
「なんですか?」
「私に遺言みたいなものはないか?代わりに私にやって欲しい事とか」
「う~ん、突然そんな事を言われても思いつきませんね」
「何でも良い。残された子供を立派になるまで育てて欲しいとか何とかあるだろ?」
「いや、そもそも子供なんていませんし。大体、私を幾つだと思ってるんですか」
「それはさて置きだ」
「置かないで下さいよ。でも、ごめんなさい。遺言なんて思いつきません。私は未来よりも今を大切にしたいです」
「今を大切か。舞歌らしいな」
「そうですか?私これでも今までは未来への希望を探して生きていた性質なんですよ」
「そうなのか。……ふっ、どうやら私はまだまだ舞歌の事を理解出来ていないようだな」
「それで良いんですよ。互いの奥底まで見えちゃったらつまらないじゃないですか。見えない部分があるからこそ相手をもっと知りたい。それで人間関係はうまく成り立っているんだと思うんですよ」
「なるほど。確かにそうだ」

