(ふむ……)
手札をテーブルの上に捨てる。
ポケットから一枚コインを取り出すと、山口に向かって弾いた。
放物線を描いて飛んだコインを山口は慌てて受け取ると怪訝な表情になり、テーブルに散らばった手札を覗き見る。
「コーヒーで良い」
「いや、俺が勝ってるだろ」
「上官命令」
「汚ねぇ……」
山口は不満の呪詛を唱えながらも渋々椅子から立ち上がり、コーヒーの買い出しに向かう。
買出しに向かう山口の後姿を眺めながら再び煙草に火をつけた。
煙を吐き出しながら思案する。
山口はこんな面白みのない人間によく親しくしてくれている。
部下の数人は仕事で便宜上の付き合いをするだけ。
誰もが一緒にいて面白くないと思っているだろう。

